「西武中村剛也「オタオタせず待つ」不変のルーティーン」
(日刊スポーツ 5/30(火))
自らの名前を読み上げるアナウンスとともに、打席に向かう。その途上、登場曲に合わせるように、ゆっくり大きく素振りをする。
打席に入ると、右足で足場を固める。ヘルメットを脱ぎ、額の汗をぬぐう。
右手でヘルメットをかぶり直しつつ、バットの先で、ホームベース外角いっぱいを2カ所たたく。
わずかにオープンのスタンスを取り、両肩のラインは投手にまっすぐ向ける。バットを右肩にかつぎ、左手でもう1度ヘルメットの位置を直す。
左足のつま先で、地面をトントンと軽く蹴る。そして、グリップを肩の高さまで上げ、構えに入る。
◇ ◇
西武の主砲、中村剛也内野手(33)はこれらの動きを、ほぼ違わず全打席行う。2球目以降も「ヘルメットを脱ぎ、額の汗をぬぐう」からなぞり直す。
ゴルフ担当歴のある記者には、ゴルフのプレショットルーティーンにも重なる。一流のプロほどショット、パット直前には同じ動きをなぞる。そうやって、重圧のかかる局面でも、リズムを変えずに球を打つ。
しかしゴルフはあくまで、動かないボールに対して自分で間合いを決め、自分のタイミングで打てる競技だ。野球は違う。球速、コース、球筋が毎回変わる投球に、打者は柔軟に対応しなければならない。
寸分違わぬルーティーンは、野球の打撃でもプラスになるのか。中村は「毎球違う対応が求められるからこそ、自分側がブレていてはいけないと思うんですよね」と即答する。
ただでさえ球筋は毎球違うのに、自分の視点までが毎球違っては、対応は際限なく難しくなる。
中村は「構え方が変われば、ストライクゾーンに対する間合いも変わってしまう。毎球ストライクゾーンが違うのでは、選球も難しくなる」と続ける。だから、ホームベース外角いっぱいを2カ所たたいてから構えに入り、ゾーンとの間合いを一定にする。
「もう5、6年はやっていますかね」。ルーティーンを始めた11年ごろから、中村の打撃は境地に達した。そこから5年で4度の本塁打王に輝いている。
決してぶれない。それはルーティーンだけではない。同僚として付き合いの長い上本は「あいつの素振りは、毎回同じ軌道を描くんです。プロの中でも、あそこまで同じ軌道を描ける選手はそういない」と言う。
そんな評され方を本人に伝えると「それもルーティーンと一緒。自分の中に基準がないと、変化には対応できない。そもそも、上本さんとは、振ってきてる量が違いますから」と言い切った。
3歳年上のベテランを容赦なくいじるのは、西武の取材現場ではよく見る光景だ。そんな“お約束”かと思いきや、中村は真剣だった。バットマンの矜恃が、表情ににじんだ。
◇ ◇
変わってみせられたら、楽だろうに。
間近に取材する側としては、そう思うこともある。
今季の中村は「苦手」と言ってはばからない4月に「開幕から17試合連続安打」という球団記録をつくった。本塁打も5月7日の29試合消化時点で9本に達した。年間45本ペース。上々の滑り出しだった。
それが5月なかばから、状況が変わった。19日ソフトバンク戦から4試合連続無安打など、パッタリと当たりが止まった。
5月の打率は、29日現在で1割9分1厘と沈んでいる。三振も先月の15から、30と倍増した。
19打席無安打が続くさなかに、中村と話す機会があった。「結果が出ないだけではない。内容も感触もよくない」と率直だった。
それでも、ルーティーンもスイングも変えている様子はなかった。変えたくはならないのか。そう問うと、中村は「変えませんね」と語気を強めた。
コロコロと打ち方を変えていくと、ドツボにはまる。そんな経験則も持っている。「でも一番は、自分は4番を任されているからです」と言う。
「4番がオタオタしているようなチームは、絶対に強くならない。誰に4番を任せるかは、大事なチーム方針でもあると思う。なのに4番が揺らいだら、チームが揺らぐことになる」
◇ ◇
本塁打王に輝くこと6回。並外れた実績を持つ中村は、ファンに愛される一方で、課されるハードルも高い。少しでも凡打が続けば、すぐ批判にさらされる。
割り切ったような空振り三振は「次の打席が怖い」と対戦相手に不気味な印象を残すが、世間からは「打席を捨てたようだ」ととられる向きもある。変わらぬルーティーン、リズムも、人によっては「打つ気がない」と映ってしまう。
それでも淡々と、打席を重ねる。見た目も相まって、マイペースと思われがちだが、実は違う。
試合前の練習。中村は早くからグラウンドに現れ、ウオームアップを始める同僚たちに話し掛ける。
野手陣はもちろん、投手陣の輪の中にも入る。
「雄星、被打率1割台やて? 頭が上がらんわ。で、いつメジャーいくん?」
「増田、昨日マリンで154キロ出とったやんか。自己最速ちゃうの?」
後輩たちをいじり倒し、場の雰囲気を和ませる。そしてバランスボールを使ったストレッチをしながら、早出特打ちをする若手選手たちの動き、顔色を何げなくチェックする。
4月なかば。開幕から先発に抜てきされながら、結果が出せずに苦しむ田代を「そろそろ息抜きのタイミング」と真っ先に夕食に連れ出したのは、中村と渡辺直だった。
同じく先発抜てき組の木村文が、不振脱出へ打撃フォーム修正を繰り返し、もがいている様も見逃さない。すれ違いざま、さりげなく示唆する。
「お前の課題、なんやったっけ?」。木村文はそのひと言で「軸足側に体重を残して投球を待つ」と修正ポイントを明確にできた。
そうやって周囲とのコミュニケーションを欠かさず、雰囲気を明るくする。菊池雄星の被打率、増田達至の球速など、イジリのための情報収集も入念。そう指摘すると、ニヤリと笑う。
「ま、空気は読める方だと思ってるんで。一応、いろいろ考えてやってます」
◇ ◇
空気を読めるなら、それをプレーや取り組みに生かすというやり方もある。
目に見えて打撃を修正する選手の方が「努力している」ととられる。
凡退した後、悔しがる選手の方が「気持ちは入っている」とフォローされる。
しかし、中村は揺るがない。変わらぬルーティーンをなぞって投球を待ち、たとえ凡退しても、淡々とベンチに引き揚げる。
「打ち損じれば、ため息が聞こえてくることもある。それでも気持ちが揺らぐところはみせちゃいけない。期待してくださるファンに申し訳ないと、毎回思います。それでも4番だったら、静かに引き揚げないといけない」
今日も中村は、登場曲に合わせてゆっくりと素振りを始めるところから、不変のルーティーンを始める。
「幸い今は浅村や秋山が打ってくれている。でもいずれ、彼らが打てなくなる時も来る。その時には自分が打たないと。そのためにも今はオタオタせず、自分の調子が上がってくるのをじっくり待ちます」
強いムカイカゼが吹いても、4番打者なら揺らいではならない。昂然(こうぜん)と胸を張り、打席に向かう。【塩畑大輔】
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中村選手のルーティーン・・・
文章にすると!
こうなるんですネ( ´ ▽ ` )ノ
不滅のホームランアーティスト!
中村選手〜!
この記事を読んだ!
ライオンズファンは、いっそう中村選手の応援に
身が入りますヨ( ´ ▽ ` )ノ
ライオンズの他の選手のもやって欲しい〜です!
お願いします「塩畑記者さん」*\(^o^)/*
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毎回素晴らしい記事を書いて下さった塩畑大輔さん。楽しみにしていたのに突然記者をお辞めになったようですね。残念でなりません。https://twitter.com/daisukeshiohata
ひゃぁ〜、本当ですネΣ(゚д゚lll)